マン・レイ展開催中

manray.jpg
マン・レイ展−「私は謎だ。」−
〜10月27日。埼玉県立近代美術館
http://www.saitama-j.or.jp/~momas/3.htm
絵画、オブジェ、版画、写真、映画など約300点。
埼玉のあとは山梨県立美術館、徳島県立近代美術館へ巡回。

行ってきた知り合いから寄稿あったので、転載します。
展示点数多く、見切れなかったそうです。
行かれる方は余裕をもって行ったほうがよさそうです。

「マン・レイとキキ・ド・モンパルナス」 text 常葉義隆
 「ガラスの涙」という写真作品で記憶されている方も多いと思うが、マン・レイ(1890~1976)という米国生まれのアーティストがいる。マン・レイは絵を描いたり、オブジェを製作したり、写真を撮ったり、映画を作ったりと多岐にわたる活動をした人だが、特に写真家として有名である。米国生まれだが主にパリで活躍していてダダやシュルレアリスムにも関与している。1915年にニューヨークでマルセル・デュシャンと出会い、1921年にデュシャンを追うようにしてパリへ渡った。
 「ぼくは写真を撮り始める前に、何年にもわたって絵を描いていた。ある日、ぼくは一台の写真機を手に入れたのだが、それと言うのも、プロの写真家が撮ってくれた自分の絵の複製を好きになれなかったからだ。またその時代に、最初のパンクロの乾板が市場に現れ、誰でも色彩のヴァルールを保ちながらモノクロ写真を撮れるようになった。ぼくはとことんこいつの研究をやった。わずか数ヶ月で、ぼくは写真についてはもっとも老練な男になったというわけだ!なかでも興味があったのは人間で、それも彼らの顔だった。」と彼は写真を始めたきっかけについて語っている。
 私が彼の作品のなかで最も興味を持っているのも彼の人物写真だ。多くの芸術家の肖像写真を撮っているが、なかでもアンドレ・ブルトンやアントナン・アルトーの肖像写真には眼を見張るものがある。
manrayandrebreton.jpgmanrayantoninartaud.jpgブルトン(左)とアルトー
 人物写真、例えば肖像写真やヌード写真といったものには、写真家と被写体になる人物とのコラボレーションとでもいえるところがあると思う。いくら写真家の腕が良くても被写体に魅力がなければ良い写真は撮れないだろう。ここで私はマン・レイの代表作のひとつである「アングルのヴァイオリン」でもモデルとなっているキキ・ド・モンパルナスに注目してみたい。
manrayviolin.jpg
 キキは後に「モンパルナスの女王」と呼ばれるようになるが、彼と出会った当時は歌手とモデル(画家のモデル)を兼業していた。1924年のことである。二人が知り合ったのはモンパルナスのとあるカフェで、キキが帽子をかぶっていなかったために娼婦と間違えられて、店から追い出されそうになったのを、マン・レイが助けたのがきっかけであった。彼女がモデルをやっているのを知って彼も自分の写真のモデルになってくれるように頼んだ。初めは写真のモデルになるのを嫌っていたキキだが、マン・レイの情熱に負けてモデルになることを承諾した。一度目は無事にすんだが、二度目にモデルになってもらうはずだった日に、二人はたちまち恋に落ちて、その日は写真を一枚も撮らなかったと彼の自伝に書いてある。それから六年間、二人は同棲することになる。
 キキの猥褻ではないが妖艶でエロティックな魅力を見事に写真で表現しているのが、パリのアメリカ人であるマン・レイに他ならない。「黒と白」の連作における静謐な美を湛える写真もキキがモデルになっている。また一方で「キキ・ド・モンパルナス」のシリーズでは自由奔放な彼女の魅力があますことなく表現されている。もしマン・レイが、被写体としての、そして恋人としてのキキと出会っていなかったら彼の写真の私たちを魅了する力の半分が失われていたかもしれない。少なくともマン・レイの代表作の幾葉かは存在しなかったのだ。
 今(2004.9.11~10.27)埼玉県立美術館で開催されている「マン・レイ展」でそんな写真などを観覧することができる。
manraykiki.gif
キキが経営していたカフェOASIS。カウンターの女性がキキ。

キキについては↓
「モンパルナスのキキ―エコル・ド・パリ追想」
「キキ 〜モンパルナスの恋人」

↓マン・レイのゴム判。ほしい! イラストはRick Geary
manray0.jpg
マン・レイも気難しく、暗い人だったそうです。マン・レイやキキとも友人だった写真家の中山岩太の奥さんが後年そう語っていたとか。本当は絵で成功したかったらしいです。

展覧会行かれた方いらしたら、トラックバックお願いします。

Posted by 7NT-RDBL at 2004/09/24(ven) 02:35 PM [美術・デザイン ] | Hatenaブックマークに追加 |

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コメント

マン・レイのゴム判、すごい、欲しいですね。
気難し屋さん、そのもの!

posted by: patraさん
2004/09/25(sam) 03:03 AM

トラックバックありがとうございます。
トラックバック失敗して2回打ってしまいました〜。すみません、修正おねがいします。
他の記事もおもしろかったのでリンク貼らせていただきました!よろしくです!!

posted by: chapeさん
2004/09/25(sam) 10:45 AM

アンドレブルトン渋い。マンレイもかなり暗い性格だったと書いてありましたが、逆にキキは明るい性格そうですね。

posted by: たいよさん
2004/10/ 3(dim) 08:38 PM
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