パリノルール blog

「死ぬ10」（←「死ぬまでにしたい10のこと」を略してこう言うらしい）で人気を集めたイザベル・コイシェ監督の新作です。主演も前作と同じサラ・ポーリー。他にティム・ロビンス。オススメです。

2007年2月10日（土）〜
TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて公開
詳しくは、オフィシャルを↓
http://www.himitsunokoto.jp/

予告編

大海にぽつんと建つ石油掘削所の風景がすばらしい！

←Isabel Coixet

フランス関係の映画でもないのに（スペイン映画です）、
なぜこのパリノルールblogでとりあげているかというと、
映画の中に出てくる「ポルトガル文（ぽるとがるふみ）」という本が
もともとフランスで刊行されたものなんですね、
というこじつけからです。

「ほるとがる文」は、
17世紀のポルトガルの尼僧マリアナ・アルコフォラードが
恋人のフランス軍人シャミリー侯爵に宛てた5通のラブレターをまとめたもので、
失恋経験者の必読書と言われる一冊です。

←サンジェルマンデプレの書店から17世紀半ばに刊行

ポルトガルに駐屯していたシャミイー侯爵と恋に落ちたマリアナは、
本国に帰ってしまったシャミイーに熱烈なラブレターを送り続けます。
シャミイーはこの手紙を友人たちに披露。
当時フランスでは、女性が恋愛感情をこんなにストレートに表すことがなかったそうで、
たちまち評判になり、パリの出版社が本にして刊行、
フランスはじめ、ヨーロッパの書簡文学に大きな影響を与えたそうです。
ラファイエット夫人の「クレーヴの奥方」などが生まれたのも
マリアナの恋文に触発されてのこととか。

マリアナ（マチス画）とシャミイー侯爵
返事をくれないシャミイーに恨み言を言いながらも、
初めて知った恋の喜びを切々と綴るマリアナの乙女心がとってもカワイイ。

↑マリアナが10歳から83歳で亡くなるまで住んでいた修道院。
このベランダから騎馬練習中のシャミイー候を見て一目惚れしたとか。
現在は、Museu Regional de Beja という博物館になっているらしい。

日本では「ほるとがる文」というタイトルで佐藤春夫訳が出てますが、
表現が古すぎてやや読みにくいかもしれません(マリアナに感情移入しずらい)。
安部真穏訳「新訳 ぽるとがる恋文(ぶみ)」という本も出てますが↓

ぜひ女性の翻訳者で読んでみたいですねぇ。
可児百合子・竹中静子共編で「ポルトガル文」という本が出てるらしいのですが、絶版のよう。

フランス語ができる方なら、こちらに原文が↓
Lettres portugaises
http://clicnet.swarthmore.edu/litterature/classique/guilleragues/portugaises.0.html

佐藤春夫訳は英語版を、
安部真穏訳はポルトガル版（フランス語から訳したもの）を、
もうひとつ出ている水野忠敏訳「ポルトガル文」は
リルケ版（なのでたぶんドイツ語）を下敷きにしてるので、
原著のフランス語から直接訳したものを読みたいもんです。
ぜひ誰か訳して、青空文庫に挙げてほしい！

マリアンナの手紙自体は残っていないため創作ではないかとの説もあるそうですが、
Myriam Cyrというカナダ人の女優さんが3年をかけて調査、
マリアナが書いたという結論の本を昨年上梓したようです↓

「Letters of a Portuguese Nun:
Uncovering the Mystery Behind a 17th Century Forbidden Love」
講演会の様子（英語）

「ぽるとがる恋文」について触れてるblog↓
Le Journal de La Princesse frivole
Pura Vida の　プ〜ラプラ散歩

で、肝心の映画「あなたになら言える秘密のこと」ですが、
映画の背景については、パンフにも映画鑑賞後に読むように、と注意書きがあるので、
もうひとつ秘密に抵触しなさそうな小ネタを↓

挿入歌に日本語の歌が出てきて、
突然意味のわかる言葉が流れてちょっとびっくりしますが、
神山みささんというストリート・ミュージシャンの「ケンカは嫌い」という曲のようです。
日本通のイサベル・コイシェ監督らしい選曲。

神山みさオフィシャル
この方のようです。

以下はネタバレ含むので、映画を見終わってからクリックを。
http://www.irct.org/
http://www.irct.org/Default.aspx?ID=738
http://www.rbbtoday.com/news/20061023/35159.html
http://www.clubcultura.com/

バラしてる某新聞の映画記事もあったので、見る前の検索はほどほどがいいかも。

Posted by 7NT-RDBL at 2007/02/ 6(mar) 10:33 PM　[映画 , 本・雑誌 ] | |